私と執事

紅葉の栞  秋

真っ赤に色を変えた葉が綺麗に映える秋空の下、庭で私は執事と紅葉狩り。
彼ははらはらと散る葉を宙で捕らえ、表裏と引っくり返して見ていた。
「綺麗だね。紅葉」
「毎年の事じゃないですか。よく飽きませんね、毎年」
「ふーん、いいもん。貴方は庭に興味がなさすぎるのよー」
彼はふいと向こうを見て、そうですね、呟いた。
何で興味ないのか、こんな素敵な庭に。
足下のレッドカーペット、私は拗ねて葉を蹴って宙に躍らす。
彼の足が止まる。
1つ分の足音が虚しくて、私も足を止めて。
彼を振り返ると、また舞い散る葉をとって。

「嗚呼、私も飽きませんね、毎年」
「何で、さっきと真逆よ、それ」
「貴女が毎年違いますから、ね」
私が毎年、違う?どういう事だろう。
「小さい頃はそこで転んで泣いて、私が背負っていたのに、今はもう一人で歩いていますから」
「いつの話よ」
「さあ」
彼が私に紅葉をくれる。綺麗な形だ。
「本の栞にでもしましょうか?」
「そうね」
「行きましょうか」
左手に紅葉、右手は彼の手。

いつもと違う紅葉狩りに、私は隣の彼を見れず、頭上の紅葉を見上げる。
きっと、私はあの紅葉より真っ赤になってるから。
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