シローせんぱいのこと。
「今日もかわいいですねぇ、アヤさん」
「えっ」
「みてるの、バレバレですよ」
ふふ、と笑ったわたしに、シローせんぱいは少し驚いて、パッと視線を手元のおにぎりへ戻す。
「……別に、アヤのことなんて見てないけど。俺は工場長の手作りおにぎりに夢中だし」
「工場長じゃなくて工場のおばちゃんですよー?」
「どっちでもいいの」
照れかくしなのか、少し動揺してもぐもぐと食事を続ける。そんなシローせんぱいは、複雑だけどちょっとかわいい。
シローせんぱいが、ここでごはんを食べるわけ。それはきっと、『外で食ったほうが美味いから』だけじゃない。
いつも中庭で、ともだち数名とごはんを食べる、あの人がいるから。
シローせんぱいの、スキな人がいるから。