シローせんぱいのこと。
「はぁっ、さむいねぇ~……」
12月の夜。当然空気は冷たく、吐き出した息を白くする。
そんななかずんずんと前に進んでいくブルさんは、寒さなど気にしないらしい。
少し歩けば、あるのは近くの小さな商店街。
並ぶお店の明かりと飾られたクリスマスの電飾、流れるクリスマスソング。それらがもうすぐクリスマスがやってくるのだと知らせる。
「クリスマス……そっかぁ、もうそんな季節なんだねぇ」
ひとりブルさんに話しかけながらいつものおさんぽコースから一本道をはずれ、入った細道。
そこを抜けると、この商店街一大きなクリスマスツリーがある広場に出た。
商店街の人たちが飾り付けた大きなツリーは今年もきれいにかがやいて、通る人がたびたび足を止め写真を撮っている。
「ブルさん、今年もきれいだねぇ」
『わんっ』
クリスマスのBGM、大きなツリー。それらに思い出すのは、シローせんぱいをスキになったあの日のこと。