シローせんぱいのこと。
「う~ん……」
ある日の朝。
購買横の自動販売機で、わたしは真剣な顔をして悩んでいた。
ホットココアを買おうと思ってお金をいれたけど……今になってレモンティーと迷ってしまった。
甘くてあたたかいココアを飲むべきか、さっぱりとしたレモンティーを飲むべきか……。
すると突然、後ろから顔をつかむように伸ばされた手。
ぴたっと両頬をつつむ手はキンキンに冷えていて、触れた瞬間わたしの体温を一気に奪う。
「ひっ、ひぃー!!」
驚きと冷たさについ声をあげて、目の前の光るボタンを押してしまう。
ガコン、と出てきたのはココアでもレモンティーでもなく……冷たいコーヒー。
それを手に後ろを振り返ると、そこには今日も白いセーターに身をつつんだシローせんぱいが立っていた。