シローせんぱいのこと。



「おいこら、シロー。お前なに後輩口説いてんだよー」



その時、うしろからかけられた声に、わたしははっと我に返る。



見ればそれは、3年生の男子たち。シローせんぱいほど明るい色ではないけれど、みんな茶色やベージュ色の派手な髪にピアスやアクセサリーをしている。

そう、日頃シローせんぱいとよく一緒にいる人たちだ。



「園芸委員の仕事終わったんだろ?早く教室行こうぜー」

「ん。今行く」



その人たちに呼ばれ、シローせんぱいはわたしの髪からそっと指をほどく。



「じゃあね、えな。……また、昼休み」



そしてくしゃくしゃと頭を撫でて、去って行った。



あたま、なでられた……。

うれしい。シローせんぱいとの距離と、ふたりだけの秘密の合図のような『昼休み』の一言。



さっきまで寒かったはずなのに、体中の熱が今になって沸騰しそうにこみ上げてくる。

手元のコーヒーの冷たさすらも、気にならないくらい。



あついよ、ドキドキする。

あぁ、やっぱりスキ。だいすきだなぁ。



そんなことをしみじみと思いながら、遠くなるシローせんぱいの後ろ姿を、わたしはずっと、ずっと見つめていた。




< 24 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop