シローせんぱいのこと。
2年生の教室がある本校舎から、渡り廊下を歩けば着く南棟。
そこには理科室や美術室など、科目用教室がいくつかならんでいる。
そのなかの3階にある、音楽室……のとなりの、『音楽準備室』と書かれた教室の前でわたしは足を止めた。
ドアとは反対側にある窓に映るのは、茶色い髪をみつあみにしばり、前髪を左でわけた自分の姿。
……へんなとこ、ないよね。
白いセーターによごれはないし、すこし短めのスカートにはきれいなプリーツ。紺色のくつしたも左右あってるし。
うん、だいじょぶ。
今日もドキドキと緊張してしまうこころに、小さく息を吸ってドアに手をかけた。
「シローせんぱーい」
ガラ……と音をたててドアをあけると、目の前の大きな窓からは、ふわ、と吹く12月のつめたい風。