シローせんぱいのこと。
「はい、以上。あーもう、この話終わり。終了」
恥ずかしそうに頬をほんのり赤くした顔を背け、ムリヤリ話を終わらせる。
そんなシローせんぱいに、わたしはてきとうに相づちを打ってまたカレーを一口食べた。
……おかあさん、ごめんなさい。
折角のカレーが、あんまりおいしく食べられないや。意味もなく喉を、通っていくだけ。
聞くんじゃ、なかった。諦めがつくかもしれないなんて、なんで思っちゃったんだろう。
そんなわけなかった。むしろ、反対。諦めとは真逆の、痛みと後悔ばかりが押し寄せる。
ねぇ、シローせんぱい。
わたしも、シローせんぱいのためなら笑えます。シローせんぱいが笑ってくれるとうれしいです。
抱くきもちは同じなのに、同じ“スキ”のきもちなのに。
どうしてその目は向こうを向いていて、こっちを向いてはくれないんだろう。
「ご、ごちそうさまでした。5限目移動なので、もう行きますね」
「ん。また明日」
早々とお弁当を食べ終え立ち上がると、シローせんぱいはその場に座ったまま、いたってふつうに手を振った。
すき、だいすき。シローせんぱいが、すき。
だけど、いくら一緒にご飯を食べても、笑いかけられても、あなたが見るのはわたしじゃない。
わたしは、アヤさんにはなれない。