シローせんぱいのこと。
*
「町田ー、このノート職員室まで運んでおいてくれ」
ある日の、6時限目前の休み時間。
次の時間の体育の授業へ向かおうとしたわたしに、数学の授業を終えた先生は言った。
「なんでわたしなんですかー」
「日直だろ。それにどうせ次体育だからグラウンド向うんだろ?ついでだよ、ついで」
「え~……」
ちら、と見た教壇には積み上がったクラス全員分のノート。
結構な量があるにもかかわらず、先生は「たのんだぞー」と教室を出て行ってしまった。
「えな、大丈夫?手伝おうか?」
「ううん、大丈夫。先に更衣室行ってていいよ」
「そう?じゃあジャージとか持って行っておくね」
そうわたしのジャージの入ったバッグを手に取り教室を出たあっちゃんに、お礼を言って手を振る。
しかたない、パパッと運んじゃおう!
ふんっと気合を入れて、ノートを持った。