シローせんぱいのこと。
……と、思ったけど。
「やっぱり、重い……!」
重いノートを抱えひとり廊下をヨロヨロと歩きながら、あっちゃんの申し出を断ったことをこころから後悔した。
先生もこれを女子に運ばせるって……ひどい!
あまりの重さにこの場にノートを置き去りにしたくなるものの、出来るはずもない。けど急がないと体育に遅れちゃう。
そう考えると、きもち足は早くなる。
「うぉーっ!くらえー!」
「ん……?」
すると、通りがかった中庭では、なにやらわーわーと騒ぐ声。
見ればそこでは、小さな中庭のなか、円になってバレーボールをしている3年生男子……いつものシローせんぱいのグループがいた。
「ミラクルスーパーアターック!」
「させるか!俺の超絶レシーブ!」
「ナイス!今の取り損ねたら後ろの窓割れるとこだったぞ!」
中庭……つまり近くに教室がある場所でやるバレーボール。それは普通のバレーボールより一層緊張感のあるものらしく、みんな全力だ。
また先生に怒られそうなことを……!
ノートを抱えたままつい足を止めて見れば、その輪のなかにはきたボールを軽くトスで返すシローせんぱいの姿。