シローせんぱいのこと。



「えな!大丈夫!?」

「は、はい……」



さすがのシローせんぱいもひどく驚いた様子で、一番にわたしの顔をのぞき込む。



「ケガは!?頭ぶつけてない!?」

「はい、びっくりして転んじゃっただけで……」



『大丈夫』、そう答えようとした時、痛む鼻からたらりとなにかがたれた感触がする。



ん……?

ぽた、とわたしの白いセーターにたれた赤いものが血であることから、それが鼻血なのだとようやく気付いた。



「……ぶっ」



それと同時に聞こえたのは、ふきだす笑い声。



「……?」



顔をあげると、囲んでいた男子のひとりが笑いをこらえるようにニヤニヤとこちらを見ている。



「わり、我慢できなくて……けどさ、ボールぶつかって鼻血って。マンガみてー……」



鼻血をたらす顔がすこしまぬけに映ったんだろう。

ぶっ、くくっ、とわらうその人に、わたしは急いでセーターの袖で鼻を隠す。


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