シローせんぱいのこと。
「……よし、とりあえずこれで」
「……ありがとう、ございます」
やってきた保健室では、鼻に氷のはいった袋とティッシュをあてる私と、向かいに座り私の顔を伺うシローせんぱいの姿があった。
「えな、まだ血少し出てるみたいだしティッシュ鼻につめとけば」
「それはさすがにいやです……!」
鼻血を出しただけでも恥ずかしいのに、そんな姿まで見せたら本当に泣いちゃうよ……!
ならばせめてとティッシュをあてていると、ふと思い出す。
「あ!わたし次、体育……」
「……休みに決まってるでしょ」
「けど、」
「先輩命令」
命令!と強く言われてしまうとそれ以上はなにも言えず、それに加えもともと体育があまり得意じゃなくすきでもない私は、すんなりとそれに従った。
「あれ、シローせんぱいは次の授業は」
「えなが心配だからついててあげる。どうせ地理の授業、寝るだけだし」
「……」
うまいことサボリの理由に使われてるだけのような……。
いまいち腑に落ちずにいると、休み時間の終わりと6時限目の始まりを告げる予鈴が、キーンコーン……と鳴り響いた。