シローせんぱいのこと。
「……」
ふたり、自然と無言になる保健室。
薬品やシーツの独特の匂いのなか、窓からは12月の風がふわりと入り込んだ。
「寒……窓開いてるし」
「換気してたんですかね」
「閉める」
暖房はきいているけれど、それ以上にひんやりとした空気のほうが強く、シローせんぱいは席を立ち窓を閉めた。
あ……そういえばせんぱい、わたしにセーター貸してくれたから、シャツ1枚なんだ。
ちら、と見た先にあるベッドの上に置かれたわたしの血がついたセーターに、それは確かに寒いかもしれないと申し訳なくなってしまう。
「シローせんぱいすみません、わたしのせいでセーター……」
「ん?あー、いーよ。寧ろ、ハンカチとか差し出してやれなくてごめんね。俺も周りも持ち歩いてるようなタイプじゃなくて」
「けど……あっ、寒いですよね!?わたしのセーター着ますか!?」
「えなのセーター、俺にはピッチピチピチでなかなか気持ち悪い光景になると思う」
うっ……たしかに。
レディースMサイズのわたしのセーターをパツンパツンに着たシローせんぱいを想像して、自分の発言のマヌケさに呆れた。