シローせんぱいのこと。
シローせんぱいと一緒にいられれば、それだけでしあわせ。
それだけで、いいって思ってた。
けど、『それだけ』のことがなくなってしまったら、わたしはどうすればいいんだろう。
言えないまた、伝わらないままの想い。伝えたとして叶わない想い。
その気持ちを、この先も一生抱えて生きていかなくちゃいけない。
「どうした?えな。いきなり黙って」
「い、いえ。……受験、がんばってくださいね」
「俺よりえなでしょ。進級できんの?」
「うっ!」
ねぇ、シローせんぱい。わたし、今ちゃんと笑えてましたか?
精一杯、笑ってみたんです。
ほんとは、また泣いてしまいそうな気持ちでいっぱいなのに。
泣いたりして知られたくない。気づかれてフラれて、春がくるより先にさよならしたくない。
臆病なままのわたし。そんな自分がきらい。だいきらい。
それと同じように、シローせんぱいのことも、いっそきらいになれたらいいのに。