シローせんぱいのこと。
「あれ、もしかしてぶつかった?」
「……ばっちり。俺がバカになったらどーしてくれんの」
「大丈夫!シローの頭には元々知識なんて入ってない!」
「あはは!」とシローせんぱいの背中をバシッと叩くアヤさんは、笑いながらボールを受け取る。
……仲良いなぁ。
やっぱりシローせんぱいがすきになる相手。さっぱり、にこにととして、裏表のない表情。
こんなに近くで見たのは初めてだけど……顔も小さいし、美人だなぁ。
目の前のふたりだけの世界に、胸がちくりと痛む。
ついほれぼれと見るわたしに、アヤさんは気付いたようにこちらを見た。
「ん?あ、シローがよく絡んでるって噂の2年生!初めまして!可愛いね!」
「えっ、あっ、は、初めまして……」
にこ、と眩しい笑顔を向けると、その手はわたしの手をにぎりぶんぶんと揺さぶった。