シローせんぱいのこと。
「えなの今日のメシは?」
「今日は、おかあさんの手作りサンドイッチです」
「……さすがえなの母ちゃん。毎日頑張るねぇ」
相変わらずぼーっとした口調で言うシローせんぱいに、私はベランダに出てとなりに座ると、お弁当の包みをあけた。
「せんぱいは今日もコンビニおにぎりですか?」
「ん。工場のおばちゃんの手作りおにぎり」
工場のおばちゃんも機械で作ってると思う……。
けどそんなつっこみは飲み込んで、お弁当箱に詰まったおかずと包まれたサンドイッチを目の前に「いただきます」と手を合わせた。
シローせんぱいは、いつもぼんやりしてる。
無表情でゆるゆるとしていて、とにかくマイペース。けどその雰囲気が人を寄せつけるらしく、シローせんぱいのまわりにはいつも人がいる。
「……からあげ」
「へ?あっ!」
その単語に意味がわからずにいると、その指先はわたしのお弁当箱の中のからあげをひとつつまみ、ぱくっと食べた。
その間、わずか3秒。