シローせんぱいのこと。
「……シローせんぱい?」
あれ、いつもならドアを開けた時点で振り向くのに。
まだ向けられたままの背中に、どうしたんだろうと近づけば、ベランダに座り窓によりかかっているように見えていたシローせんぱいは目を閉じている。
「……すー……」
聞こえてくる小さな寝息。どうやらシローせんぱいは寝てしまっているらしく、わたしはそっと隣に腰をおろす。
寝てる……めずらしい。
前の時間、また自習だったのかな。で、ここにいるうちに寝ちゃったっぽい。
「すー、すー……」と規則正しい寝息に、顔をのぞきこめば整った寝顔がそこにあった。
もともとかっこいいから、寝てる姿もかっこいい。
まつげ長いなぁ、よく寝てる。
まじまじと顔を眺め、視線はなにげなくシローせんぱいの手元へ向く。