シローせんぱいのこと。
「……あの、聞いてもいいですか」
「ん?なに?」
苦しい胸をおさえるように拳をぎゅっと握るわたしに、気付くことなくアヤさんは首を傾げる。
「アヤさんは、シローせんぱいのこと、どう思ってるんですか……?」
聞いて、しまった。
聞いたところでどうにもならないのに。アヤさんの気持ちがどうでも、シローせんぱいのきもちは変わらないのに。
だけど、もしかしたら。
アヤさんがシローせんぱいを『スキ』って言ってくれたら、諦められるかもしれない。
『それなら仕方ない』って、シローせんぱいのしあわせを、願えるかもしれない。
「シローのこと?あー……そうだねぇ」
唐突な質問にもきちんと答えてくれようと、アヤさんは呟き小さく笑う。
「いい奴だよね。大切だよ、友達として」
「……」
その表情と、言葉から分かってしまった。
ウソじゃ、ないこと。
アヤさんはシローせんぱいのことをそういう目で見ていない。スキとか、恋愛とかじゃない。
友達としてしか、見てない。
……よかった。
ホッと安心して、ふと気付く。『よかった』、?
恋は、叶わない。スキな人に、友達としてしか見られていない。
それがどれだけ切ないことか、わかっているのに。わたしは、シローせんぱいの恋が叶わないことに、安心した?