シローせんぱいのこと。
「……そう、ですか。すみませんでした、ありがとうございました」
わたしはそうアヤさんに頭を下げると、その場を歩き出す。
そして長い廊下の角を曲がり、アヤさんから見て死角に入ったところで、力が抜けたようにその場にしゃがみ込んだ。
やだ。わたし、いやだ。最低。
自分の醜さに、気付いてしまった。
シローせんぱいがしあわせなら、しあわせ?
アヤさんもスキなら諦めがつく?
そんなわけない。
だって、スキだから。わたしに気付いて、こっちを見てくれたらいいのにって、そればかり思ってる。
シローせんぱいの恋が叶わなければいいって、本当はずっと思ってた。
みにくい、最低。誰よりも、いやな人間だ。
溢れ出す心の奥のドロドロとした気持ち。スキなのに、こんなにスキなのに。シローせんぱいを想うとこんなにドキドキして、毎日がキラキラとするのに。
ほんとのわたしはこんなに汚い。こんなに最低。
スキな人のしあわせすらも願えない。
こんなわたしはきっと、シローせんぱいの近くにいる資格なんてない。
こんな自分が、だいきらい。