シローせんぱいのこと。
当然、シローせんぱいはそんなわたしを訪ねて来てくれるわけもなく、そのまま。
彼の中での自分の価値に少し落ち込みもしたけれど、このまま終わってしまえばいいとも思う。
けどわたしがシローせんぱいのところに行かないということは、なにかあったはず。そういう結論に自然とたどりついたのだろう、問いただすあっちゃんの顔は真剣だ。
「あんなに好きだって言ってたじゃん!いきなりどうしたの!?」
「いやぁ、なんていうか……」
「もしかして、私がやめろって言ったから?私のせい?」
「えっ!ちがうよ!」
わたしがどれほどシローせんぱいに夢中だったかを知るあっちゃんだからこそ、どうしてか分からず悲しい顔をする。
……へんに誤解されちゃったりするより、きちんと話したほうがいいよね。
その思いから、小さくひとつ息を吸った。
「……わたし、シローせんぱいのこと好きでいる資格、ないと思う」
「え?」
「シローせんぱいのしあわせをね、願えないの」
ぼそ、と呟く目の前には、今日もおかあさんが作ってくれた彩りのきれいなお弁当。
『さすがえなの母ちゃん』と言って笑うシローせんぱいの姿を思い出して、また苦しくなる。