シローせんぱいのこと。
「この前、アヤさんにいきあって……聞いちゃったの。シローせんぱいのこと、どう思ってるか」
「まさか、両想いだったとか?」
「ううん、『大切な友達』だって」
「なんだ、よかったじゃん!」
安心したように笑うあっちゃんに、わたしは首を横にふる。
「……そこでわたしも、『よかった』って思っちゃった。スキなひとのしあわせを願ってたはずなのに、シローせんぱいの失恋を、よろこんで安心した」
がやがやとにぎわう教室の隅で、呟く言葉。
それはドロドロと、醜い自分を見せつける。
「そんな自分が、やだよ……」
「えな……」
汚い自分。こうしてまた、あっちゃんに『諦めろ』って断ち切ってもらいたがってる。
どんどんとまた、ぬかるみにはまってしまう。