シローせんぱいのこと。
すると突然、あっちゃんの指先はわたしの額をピンッ!と強くはじいた。
「いたいっ!」
「バカえな」
「えぇ!?」
い、いきなり!?
痛みと驚きに目を丸くするわたしに、あっちゃんは呆れたように息を吐く。
「そんなの当たり前じゃん。願えなくて、汚くなって当たり前!」
「へ?」
あたり、前……?
「えなはシロー先輩を好きなんでしょ?なら少しでも自分に可能性が傾くことに喜んだって当たり前なんだよ。悪いことじゃ、ないんだよ」
「けど……」
「えなはあれこれ考えすぎなの」
あっちゃんは冷たい手でしっかりと私の顔を掴み、目を見る。
「好きなんでしょ。そばにいたいんでしょ。だから一年も片思いして、好きな人がいるって知っても諦められないんでしょ」
「うん……」
「ならそれでいいじゃん。これからも黙ってそばにいるのも、告白するのも、このまま忘れるのもえな次第」
わたし、次第……。
「けど私は、できるならちゃんと伝えてほしい。例えダメでも、『好きになってよかった』って、そうえなが思えるような恋にしてほしい」