シローせんぱいのこと。
「あっ、これアーモンドチョコ!」
「ん。えな、アーモンド好き?」
「はいっ、だいすきです!もったいないからあとで食べます」
もらったチョコレートをスカートのポケットの中に入れると、隣ではシローせんぱいが『それくらいすぐ食べればいいのに』と言いたげな、やさしい目でこちらを見ている。
その視線に「えへへ」と笑うと、お昼ごはんのサンドイッチを一口かじった。
時折ふく冷たい風が、わたしの紺色のスカートの裾と、シローせんぱいのキラキラとした毛先をゆらす。
「あー……寒い」
「寒いのにベランダで食べるんですね」
「ん。外で食ったほうが美味いから」
シローせんぱいらしい、シンプルな理由。それを答えて、置いてあったペットボトルの紅茶を飲むシローせんぱいは、ふとなにかに気付いたように目をとめた。
「あ……えな」
「へ?」
なにかと思えば突然、その指先はわたしの唇のはしをそっと撫でる。やさしく、冷たい感触に、さきほどより強く心はどきっ!と鳴った。
、