シローせんぱいのこと。
「……それでも俺は、好きだから」
問いかけに対して、迷いなく言われた一言。
それは汚いわたしへの、罰だ。
シローせんぱいにはアヤさんしか見えない。
どんな結果でも、アヤさんの気持ちがどうでも、シローせんぱいのきもちはひとつ。
“アヤさんが すき”
わたしがシローせんぱいを想っているのと、同じように。
「……そう、ですか。がんばって、くださいね」
声が震える。
言おうと決意してきた言葉は、出てこない。
「……わたし、もうここには来ません」
「え?」
「ベランダ寒いですし、わざわざここまで来るのも面倒ですし……半年も私のワガママに付き合ってくれてありがとうございました」
えへへ、と精一杯の笑顔でこぼす言葉は、伝えようとしていたものとは真逆のもの。
「じゃあ受験、がんばってくださいね。……さよなら」
別れの、言葉。
それだけをいうと、すぐにその場を後にした。