シローせんぱいのこと。




『わふっ』



そのとき、突然ブルさんは走り出す。



「えっ!?わっ、ブルさん!?」



ものすごい力とスピードで、わたしを引きずるようにして走るブルさんに、当然足の遅いわたしはついていけるはずもなく……必死に走るものの、途中でリードを持つ手を離してしまった。



「まって……まって、ブルさん!」



自由になった途端に人ごみのなかへと入っていってしまうブルさんに、見失うわけには行かないとわたしも必死に追いかける。

まって、まって……なんで今年も、ブルさんは逃げるのー!!



「はぁっ、ブルさ……まって、」



走って、走って、走って、その小さな体を追いかける。

いつもはいい子なのに、なんで今日に限って……。



……あれ、でも待って。この道って。

細い道を駆け抜けながら、覚えのある道だと気づく。



商店街の脇道の、細い路地。

この先にあるのは、確か




< 87 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop