シローせんぱいのこと。




「っ……シローせんぱい!」

「……えな。どーしたの、そんな汗だくで」

「あの、えっと……」



こちらに向けられるいつもと同じ優しい瞳に、泣きそうになる。

声が震える。けど、伝えたいよ。溢れるきもちの、ほんのひとかけらでも。



「……去年も、同じ光景を見ました」

「……?」

「ブルさん……その子が逃げ出しちゃって、一緒に探してくれた人がいたんです。せっかくのクリスマスに汗だくになって、一生懸命探してくれた」



あの日、あの瞬間から。ずっと、ずっと。



「その人のことがずっと頭から離れなくて……気付いたら、スキになってました」



あなたが覚えていないとしても、わたしは



「……シローせんぱいのことが、スキなんですっ……!」



世界でいちばん、あなたのことがスキ。

はっ!わたしってば、大声で……しかもクリスマスにツリーの前で告白って!ベタすぎる!



周囲の人がこちらを見ながら歩いていく光景に、予想以上に自分が大きな声で告白していたことに気づく。

恥ずかしさから一気にかぁぁ~っ……とあかくなる頬を両手で押さえ、今すぐ逃げ出したい気持ちでいっぱいになった。


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