彼氏と思っていいですか?


「お姉ちゃんにしては珍しいね。どうしたの。部屋もなんか散らかってるし」

「なんでもない」


言われてカーペットの上に散乱している雑誌やらカードやらを足で隅っこに追いやった。
これはあれだ。どうしよう、どう思っているのかな、とあれこれ物思いにふけっていたら、雑誌の恋愛体験談に手が伸びて、バックナンバーを遡っているうちに今度は占いまで気になりだしたんだ。


とはいっても朝陽くんの星座はおろか、生年月日も血液型もわからない。
できることといえば——。


「なーにそれ。タロットカード?」

「なんでもないってば!」

「へー。お姉ちゃん、そんなの持ってたんだ?」

「うるさいよ」


うん、持ってた。小学生の頃、クラスで大流行したときに私も本屋さんで買った。それを思い出して、押入の奥から引っ張り出してきたところだった。
使わないけど使えるからと捨てずにおいた私冴えてる! とさっきひっそり興奮したのは内緒だ。


「今日はカレーだから! ヒマなら野菜刻むの手伝って」

「ヒマじゃないもーん!」

逃げ足の速いヤツ。ま、はなから手伝いはあてにしていなかったけどね。
それでも共働きの両親が帰るまでに夕食を整え、私と深雪は先に食事を済ませた。

< 12 / 63 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop