彼氏と思っていいですか?
「食う?」
「は?」
聞き違えたかと思って問い返す私。
幹仁くんはというと、箸を持ったまま右のこめかみを指先でかいている。
「いや、食いたいのかなと思って。じっと見てるからさ」
「違います!」
もう帰るから、と自分の自転車のところへ行ってバッグのなかの鍵を探る。待ってよ、と声が追ってきた。
「送るよ。暗いだろ」
「ありがとう、でも大丈夫だよ」
「ほんとに?」
なぜそんなに送りたがるの、と聞くまでもなかった。
辺りが急に騒がしくなった。ちょうど他校の男子生徒の集団が、向かいのコンビニから出てきたところだった。一見してガラの悪そうな人たちだった。
「……大丈夫じゃないかも」