彼氏と思っていいですか?
送ってもらうといってもお互いに自転車なので、私がまえを走り、幹仁くんが追走する形になった。
声が届きにくくても、構わずに幹仁くんは話を振ってきた。紗菜はなんに出るの、とここでも話題は体育祭のことだった。むかで競争、と正直に答えたところ、反応がない。
振り返るわけにもいかず、そのまま歩道のない道を慎重に走り抜ける。
信号に差し掛かったところで隣を向くと、反応がないわけではなかった。
幹仁くんは笑いをこらえていた。
「え、そんなにおかしい?」
また団体種目だの成績が団体責任の種目だのと言われるんだろうか。
「ちょっと思い出しちゃってさ。いや、朝陽もそれに出たがってて結局別のにまわされたの知ってただけに、余計にさ」
赤に変わったばかりの信号はしばらく青になりそうになかった。
家路を急ぐ車の流れも途切れがちだ。
時折、しんとしたなかに秋の虫の声が響く。
どこかの家の庭に生息しているんだろう。
さっきのコンビニまえの柄の悪い高校生たちは違う方向だったみたいで、それきり姿は見えなかった。
平和な夜だ。車が来ないのを確認してこのまま渡ってしまいたくなる。
「今日の部活のとき、朝陽がやたらと見物客を気にしてんの」
一気に話に引き戻された。朝陽くんが、なに?