彼氏と思っていいですか?
「公道に面したグラウンドだから、一般の人もフェンスで立ち止まっていくことはあるけど、うちのサッカー部は弱小だからさ。そう熱心に見る人なんていないんだよ」
ああ、サッカー部は弱小だったのですね。
朝陽くんはそこのレギュラーで……ま、いいか。
「あれは特定の誰かを探してたんだな。あまりにひどいから、集中しろって先輩に怒鳴られてたよ」
誰かを探してた?
「それって……」
「あ、信号変わった。行こう」
「う、うん」
朝陽くんが探していたのは、もしかして私かもしれない。
私の所属している調理部は今日は部活は休みだった。活動日だったなら、きっと窓からサッカー部の練習風景を見ていたはずだ。
でも調理室に人気がなかったから、朝陽くんは気になって、見物人のなかに私がいないか探した、とか?
放課後の朝陽くん情報を半端にリークした幹仁くんは、それ以上を教えてはくれず、私の推測が合っているかどうかはわからずじまいとなった。
幹仁くんの発言もあって、ますます朝陽くんに連絡しづらくなってしまった。
私を探してたの? なんて聞いて、もし違っていたら恥ずかしい。
メールならともかく、たとえば電話だったら勢い余って聞いてしまいそうだ。
結局、その日は朝陽くんからも音沙汰はなかった。