彼氏と思っていいですか?

教室に戻って、香織ちゃんの席のそばで自分のお弁当を開く。

「なんか、嫌だな」

「え」

食事中に陰鬱なつぶやきを漏らすマナー違反を恥じながらも、私は私を止められない。

「あれはお礼とか、そんなんじゃないし。お礼ならはじめからお礼のつもりで作りたかった。こういうの、すごく嫌。うまく立ち回れない自分がすごく嫌」

「紗菜ちゃん。なにか、あった?」

「ごめん。心配してって言っているようなものだよね。今の私」

もっともな香織ちゃんの問いかけさえ、また自己嫌悪の材料になる。頭を抱えそうになる。


と、そこに聞き覚えのある声が近づいてきた。

「なに、外で食うとか言ってなかった?」

「暑すぎて無理だった」

「だろうな」

中庭だの食堂へ行くだのと話していた朝陽くんとお友達、それに幹仁くんの三人が笑いながら空いている席同士を寄せるところだった。
椅子が私の背もたれに当たって音をたてる。背後にきたのは朝陽くんだった。

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