彼氏と思っていいですか?
放課後になるやいなや、幹仁くんはにやにや笑いながら空になったお弁当箱を私に返した。
「聞こえてた?」
「なにが」
聞き返しつつも、私にだってすぐにわかった。幹仁くんは唐揚げを味見した朝陽くんの反応のことを言っているんだ。
で、見てるんだよね、幹仁くん。こっちをじっと見てる。
お弁当箱をしまう私に刺さる、観察するようなこの視線。
なんか嫌。
「聞こえましたけど」
やむなく私は素直に認めた。
うつむけていた顔をあげると、白い歯を見せる幹仁くんの笑顔があった。
「よかったね」
迷ったものの、そこは素直に頷いておいた。
「幹仁くん」
「うん?」
「あの。ありがと」
ひったくるように自分の荷物を抱え込むと、私は返事を待たずに教室を飛び出した。
私の朝陽くんへの気持ちのすべてが見透かされている気がして、一刻も早く消え去りたかった。
どうして届いてほしい人には届かないのに、そうでない人には筒抜けになってしまうんだろう。