彼氏と思っていいですか?
私に好きな人がいる、と香織ちゃんは薄々勘づいていたようだ。
朝陽くんとのことを話しても特にびっくりした様子はなかった。
アイスコーヒーに落としたガムシロップを入念に混ぜてから聞いてきた。
「告白とか、するの?」
アイスティーを飲もうとしていた私の動きが一瞬止まる。
「しないよ。しないというか、ええとね、少し説明がいるんだけどね」
学校に程近いハンバーガーショップは放課後すぐの時間帯と部活終わり頃に混雑する。
そのあいだを狙ってきたものの、肩すかしを食うくらいに空いていた。
それでも室内はあの独特の味の濃い食べ物の匂いが立ちこめていて、それは人がいてもいなくても変わらない、いつもの雰囲気を作り出す企業努力のようでもあった。
四人掛けの席にはす向かいに座り、堂々とかばんを置いた私と香織ちゃんは、飲み物とLサイズのフライドポテトひとつと携帯をテーブルに乗せていた。
この時間にハンバーガーなんて頼もうものなら、夕飯がお腹に入らなくなる。
口にしたアイスティーにむせると、香織ちゃんのほうが困ったように笑った。