彼氏と思っていいですか?
「でも、窓の向こうで動いている人だったの。同じクラスにいる人だってわかっていたけど、私にとっては調理室の窓から見ているあの人、という位置づけで」
「テレビのなかの人、みたいな?」
「そうそう」
あー、わかるかも、という相槌に力を得て、もう少し現実の話をする気になった。
「おはようくらいの挨拶しかしたことがなくって、でもたまたま夏休みの宿題を一緒にやる機会があって、それもたった一日だけのことで」
つい先日の出来事だ。忘れもしない八月三十一日。
朝陽くん以外にもサッカー部の男の子たちがいた。
「ふたりになったときに、気持ちを探るような会話があってーーそう感じたのは私だけかもしれないんだけど、すごくどきどきした」
その翌朝、なんの前触れもなく朝陽くんは私の家にーー。
「あれ、朝陽の新しい彼女さん?」