彼氏と思っていいですか?
「びっくりしたね」
小声で香織ちゃんがささやく。
「そうだね」
相席までいかなくても、近くの席に来られたらどうしようかと心配だったけれど、そんなふうにはならなかった。
注文を終えた彼らは、壁際のポスターの下に集まるなり楽しそうに会話を展開している。
知っている顔があったから挨拶をしただけのようだった。
「私のこと、彼女だと思ってるのかな」
「それより、新しいって言ったのが気になる。朝陽くんってまえにつきあっている人がいたんだね」
香織ちゃんの声には非難の色が滲んでいる。
私は宥めるように笑顔を向けた。
「仕方ないよ。いないほうが不思議だよ」