彼氏と思っていいですか?
「は? え?」
「マジでわかってないの?」
幹仁くんは困ったような顔をしていた。頬に赤みが差している。
……ええと。
「わからないというよりついていけてないというか」
混乱する頭よりも先に口が動いて、私は自分の説明でやっと腑に落ちた。
そっか、私はついていけてないんだ。
それでも混乱は続いていて、
「……えー?」
それしか言いようがなくて、
「他に反応できないの?」
と、笑いを含んだ声で言われてもなにも言い返せない。
じゃあ勝手にしゃべるけどさ、となぜか幹仁くんは開き直り、本当に勝手なことをしゃべりだした。
「俺だって好きなんだよ。紗菜のこと、いいなって思ってた。周りのヤツのなかにも紗菜を気に入ってるっぽい発言するのがいたし、まあそいつらはどうでもいいし、そいつらがどこまで本気なのか知らないけど」
至近距離から強い目を向けられる。
私は動けなかった。
「俺だって友達とこじれるのは避けたいと思ってる。人のものならともかく、友達のものは取れないし、取るつもりもない」
異性からこんなに熱く睨むように見られたことなんてない。
「ただ……」
痛いくらいだったその視線が和らぐ。
「あっちにその気がないのなら、話は違ってくるよね」
優しいなかに妖しい気配が潜んでいて、そうかと思えば次の瞬間くすっと笑われた。