彼氏と思っていいですか?

「紗菜ってさ、自分を持ってるくせにスポンジみたいにこっちに反応してすうっと染まるから、男としてはもっと構いたくなるんだよ。これだけ見てくれたら気にせずにはいられないし、なかには俺みたいに好きになっちゃうヤツもそりゃあ出てくるだろ」

私、今、ものすごいことを言われている――とあさっての方向から観察力が働く。

「俺だって男だから、紗菜に好感を持つヤツの気持ちは共感できる。同時に、無防備すぎる君のことが不安というか、そんなんで大丈夫かと目が離せなくて心配にもなるわけだ。今まさにここ」


端から見てのこのときの私は、相当、呆然としていたのだと思う。
そのあと、近くにいた幹仁くんがさらに間合いを詰めてきたのを他人事のように受け流した。
なんだか迫ってきたなと思ったのは覚えている。
気がついたときには、幹仁くんの唇が私の左側の頬をかすめていた。


「――なにしてんだよ」

そのとき、急にどこかから尖った声がした。
驚いているまに腕を強く掴まれる。

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