彼氏と思っていいですか?
朝陽くんは軽く首を傾げ、困ったふうに微笑んでから、進行方向に目を戻す。
不安だったんだ、といみじくも私の胸の内にあったものと同じようなことを言いはじめる。
「幹仁はいいヤツだ。いいヤツだから、友達だから、俺と揉めるような行動を起こすはずないって思ってたんだ。幹仁を信じろ、って自分にも言い聞かせてた」
うん、幹仁くんはいい人だ。私も何度か助けられた。
勘がよくて、困っているところをすぐに見抜いて、声をかけてくれる。
「だけど不意に、それは都合のいい解釈かも、ってよくわからなくなって」
「どういうこと?」
「信じ切っているところで、足下をすくわれるんじゃないかという気がして、焦った。幹仁を疑った」
「違うよ」
私は即座に否定した。
「幹仁くん、そんなことしないよ」
言っていたもの。ちょうど今日、聞いたばかりだもの。
友達のものを取るような真似はしない、って。
「わかってるふうなこと、言うのな」
「えっ」
幹仁くんならだいじょうぶだよ、ちゃんと朝陽くんとの仲を大事に思ってるよ。
そう伝えたくて反論したのに、朝陽くんは違うように捉えたようで、空を仰いだ。
「このタイミングで、幹仁の肩を持たれるとは思わなかった」
え。
「結構、堪える」