彼氏と思っていいですか?


私は抱き寄せられたまま、朝陽くんの名前を呼ぶしかできなかった。
朝陽くんはそのたびにうんうんと返事をくれた。
なだめるように私の頭を撫でた。


「他のやつのところになんか行くな」

「行くわけない」

なにを言っているんだこの人は。
彼の胸から身を起こしたところで言われ、信じられない思いでその顔色を窺う。
にこりともしていないところをみると、冗談ではないらしい。
まだ認識の相違があるようなので、この際だからはっきり言っておく。

「朝陽くんだけが好き。大好き」


あ、そう、と朝陽くんからは拍子抜けしたような返事があった。

「なら、いいや」
「うん」


< 52 / 63 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop