彼氏と思っていいですか?

体育祭の朝は快晴だった。

澄みわたる青空のもと、次々に午前の競技が執り行われ、私は今から香織ちゃんと参加種目の集合場所に向かうところだ。


「私、これだけはなぜか強くて、一位にしかなったことないんだ」

争いごとや人と比べることに興味がなさそうな香織ちゃんでさえ、こんなぎりぎりになって、むかで競争の資質を打ち明けてくる。


組ごとに学年縦割りのチーム編成で、私たち白組は三位だった。
上位とも下位とも得点は僅差で、勝敗は午後の団体種目にかかってきそうだ。

そうはいっても、みんな自分の出場する競技に意識は向いていた。
どうしても勝ちたいという運動部同士の熾烈な争いもあれば、結果を捨ててウケ狙いにひた走る上級生もいて、見ず知らずの人が出ているのであってもなんとなく見逃せない気持ちになる。

応援する側も俄然熱がこもるというものだ。


「じゃあきっと勝てるね。楽しみだね」

「甘いな」

香織ちゃんに言ったのに、別の方向から横槍が入る。
男の子の声だ。
振り返るまでもなかった。
私にこういうことを言ってくる男子は朝陽くんしかいない。

「勝負事に『きっと』も『絶対』もない。わかった?」

朝陽くんは私の隣に並び、香織ちゃんにも言い含めた。

「わかりました」

私も香織ちゃんも素直に返す。


「そういえば朝陽くん、部活対抗リレーに出るんじゃないの? 召集かかってた気がするんだけど、平気?」

香織ちゃんが朝陽くんの出場種目を知っているのは、私がこのあいだ話していたからだ。

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