彼氏と思っていいですか?
さすがに、学校でふたりきりでお昼を食べるのはレベルが高過ぎるので、香織ちゃんに加勢してもらうことになっていた。
朝陽くんも友達を誘ってくれるらしい。
もしかしたらそれは幹仁くんかもしれないけれど、今の私には余計なことに気を回す余裕なんてなかった。
あの、と周囲の人がはけたのを見計らって朝陽くんを呼び止める。
「予告通り、作ってきたよ」
一瞬の間があった。
緊張が最高点に到達する。
なにか、まずかったかな。
そうではなかった。
片手で口元を覆い、すぐに離した朝陽くんのその顔は真っ赤になっていた。
サンキュ、と小さい声がする。
猛烈に照れている様子。見たことのない表情。
可愛いかった。
もっとこういうところを見たいと思ってしまった。
馴れ馴れしい約束だったかと気にしていたけど、彼に踏み込んだからこの顔が見られたのだから、ひとつ勉強になった。
そのまま朝陽くんを見つめ続けた。
確かめるなら今だ。
「私、まるで彼女みたいなことしちゃったけど。彼女と思っていいですか?」
私は朝陽くんが好きで、朝陽くんも私を好き。
奮い立たせる呪文を心で唱え、焦がれている言葉が彼から出てくるのを待った。
— 彼氏と思っていいですか?・了 —