彼氏と思っていいですか?
さすがに学校の近くまで行くと周囲の目が気になりはじめた。
朝陽くんと一緒に通学しているところを知り合いが見かけたら、なにか言ってくるんじゃないかと気が気でなかった。
朝陽くんはそういうの、平気そうだった。
「おー、久志!」
声を掛けられるまえに自分から声を掛けていた。しかも、すごく遠くにいる人に。
呼ばれた相手も心得ているみたいで、ごくごくふつうに挨拶を返してくる。
フレンドリーな人だった。朝陽くんもお友達も。
「珍しい組み合わせじゃね?」
あーほらね、来たよ。
いつか来ると思ったよ。こういう問いかけ。
私に目を留めるお友達に、朝陽くんがはきはきと答えた。
「うん。今までになかったな。初めてかな」
ね、と話を振られて、どぎまぎしながらも私もうんと頷く。
へえ、と相手もそれ以上は追及してこなかった。
気を利かせたのか男の子同士のつきあいってそういうものなのか知らないけれど、久志くんというお友達はそのまま私たちよりも先に校門をくぐっていった。
「朝陽くん」
「ん」
「もっとおもしろい受け答えしたほうがよかったのかな、私」
「あはは! なーんの心配してんだか」
笑う朝陽くんにはまっさらな明るい気配しかなくて、私は朝っぱらから胸がきゅうんとなってしまったのだった。