「お前は俺のモノ」【完結】
「タエ」
私の近くで止まった後、彼がいつにも増して低い声で言う。
怒りをどうにか抑えている様な声だ。
返事をするしかないと、顔を上げようとした私は割って入った声に目を見開いた。
「彬さん、今授業中です」
陽子が私を守る様に前に立っていたからだ。
はっきりとそう言うと、目の前に立つ彼を見上げている。
それに更に彼の怒りが増長されて行くのがわかった。
「よ、陽子。ごめん、ちょっと抜ける。私」
「多恵!?何で!?」
「いや、少し調子もよくないから。ごめん」
これ以上、陽子に迷惑かけるわけにいかない。
それにこのままじゃ、講義にならない。
他の人にも迷惑がかかる。
私が抜ければきっと、全てが丸く収まるんだ。
そそくさとノートをカバンに仕舞いこんで、私は彼の元へ向かう。