「お前は俺のモノ」【完結】
練習が終わってから、自然と葵兄の横に並ぶ。
二人に別れを告げてから、


「どうすんの?多恵は」


葵兄は前を見ながらそう聞いた。


「…帰るとこ、あるから平気だよ」

「本当に?」

「うん」

「そっか。そこまで送るか?」

「いい。大丈夫」

「ここから近いのか?」

「割と近いよ」

「…わかった」


心配なのか、葵兄は何度もそうやって尋ねて来る。
近いって聞いて、やっと納得したようだけど。


「何かあったらウチにおいで。つか、携帯は」

「あ、変えたんだった。今持ってない。番号わからないから」


そうやって、咄嗟に嘘をついていた。
今、携帯持ってるくせに。


“ダメに決まってるだろ?
何で?俺以外に必要?”


彼のその言葉が頭に浮かんで、それを律儀に守ってる。


もう、私の勝手にしていいはずなのに。
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