「お前は俺のモノ」【完結】
「多恵ーっ」
ぎゅっと拳に力を込める。
…葵、兄。
「開けて、心配なんだ、お前が」
首を振りながら、耳を塞ごうと手を上に持ってった時だ。
「…多恵の声が聞きたい。お願いだよ、声を聞かせて」
葵兄の、弱弱しい声が聞こえた。
葵兄のこんな声を聞いた事がない。
いつも元気で、明るいから。
胸がぎゅうっと締め付けられる。
自然と私の足は玄関へと向かっていた。
だけど、鍵を開ける事は出来ないんだ。
私はここから出たくない。
アキラから離れたくない。