「お前は俺のモノ」【完結】
「歌は!歌はもういいのかよ!!
あんなに楽しそうに歌ってたじゃないか!!」
「………」
「多恵がいないと、バンドは機能しない。
…なあ、多恵、戻って来いよ…」
「………」
「…俺、お前がいないと……」
そこまで言った時だった。
「…お前、何してんの?」
低くて静かだけど、威圧的なアキラの声がした。
それに目を見張る。
「多恵を解放しろよ」
「…しつこい。俺のモノだって何度言えばわかる?」
「多恵は人間なんだよ!
多恵には自由があるはずなんだ!
その権利をお前が奪っていいわけがない!!」
二人の口論する様子しか聞こえない。
変に緊張しながら、扉に手を触れてそれを聞く。