「お前は俺のモノ」【完結】
「待てって。なあ、多恵に両親の事ちゃんと伝えたのか?」
葵兄がそう言って、私は両親がいなくなった事を思い出した。
そうだ、いつの間にか忽然と姿を消した私の両親。
どこにいるんだろうか。
「……」
「その様子じゃ言ってないのか」
私が恐る恐るアキラの顔を覗き込むと、視線に気付いたアキラがこっちを見る。
それから、はあっと大きな溜め息を零す。
「いなくなったのは、タエが家を出てすぐだ」
「そうなの!?」
思ってもない事実に、私は目を見開いた。
「ああ。家に荷物を取りに行った時にはもう決めてたらしい」
「……そんな、早くから」
「……帰りたいか?」
その問いに、私は息を呑む。
悲しそうな、アキラの顔に胸がきゅうっと痛んだ。
私は真っ直ぐにアキラの目を見て、ゆっくりと首を振る。