「お前は俺のモノ」【完結】
「たまたまだよ、本当に」
「……俺、ここで一度しか弾いた事ないんだけど」
「え」
「しかも、弾いたのも30分ぐらいだったし」
「……嘘」
じゃあ、私は。
その、ほんの少しの時間の間に。
アキラに恋をしたんだ。
「何をニヤついてるんだよ?」
訝しげな顔で見ているアキラにハッとすると、慌てて首を振る。
「してない。全然してない」
「…そうか?」
「…ピアノ、ダメ?」
「……タエが歌うならいい」
「え」
歌う?私が?
「何を歌うの?」
「タエのバンドの歌」
「……弾けるの?」
「簡単」
口角を上げて、ニヤリと笑うアキラを見て溜め息が出る。