ストーカー【感染】
ガバッ。
拘束されていたはずの体は、簡単に私の脳から下された命令に従い起き上がった。
お味噌汁の汁がついたコタツ、懐かしいにおいのする畳。私の身体は、そんなお味噌汁が染み付いたコタツに入っている。
私のお腹には寝転がって丸くなっている愛猫のリリ。
「家……? ってことは、さっき拘束されたのは夢……」
ほっと胸を撫でおろす。リリがニャァと鳴く。
「あぁ、キョウコちゃん起きたかい」
と、懐かしい声が私の耳に届いた。
「おばあちゃん……」
曲がった腰に優しい笑顔、しわだらけの顔が安心したように笑ってさらにくしゃくしゃ。
「キョウコちゃん、どうしたんだい。家のすぐ近くで倒れていたそうじゃないの」
「そう。そうよ、私……」
そこまで言って、私は口をつぐんだ。
ストーカーの被害にあったみたい、なんて言えない。おばあちゃんに心配をかけさせるわけにはいかない。私のことを誰よりも心配しているおばあちゃんだもの。絶対に言えない。
だから私は、
「……私、ちょっと疲れていたみたい」
嘘をついた。