ストーカー【感染】
私が音を立ててドアを開けたからか、おばあちゃんは私に気がついた。黒ずんだ台所で、フライパンを片手に料理をしている。
「あら、キョウコちゃん。おはよう」
「おはよう、おばあちゃん。なんか手伝うことない?」
そうねえ、と一息おいてから新聞を郵便受けから取ってくるよう私に言った。
わかった、と私は言い、リビングを抜けて廊下へ。そのまま玄関へと行き、はだしのまま靴を履いた。郵便受けから新聞を取るためだけに、靴をきっちり履くのは面倒くさい。
いいや。かかとの部分は踏んでおこう。
玄関のドアを開ける。私の視界に入る、明るい日光。思わず目を細める。
玄関を出てすぐ横にある、郵便ポストに体を向ける。いつもなら、届いた朝刊と近所のパチンコ店のチラシくらいしか入っていないはず。
なのに。
郵便ポストから溢りかえる、手紙、手紙、手紙。
昨夜感じた、冷や汗が再び背中によみがえった。