離してなんかやるかよ。
なんせ昨晩すごい怒ってたじゃん!?
多分あたしが昨日夕方、ちゃんと神崎を起こさず帰ったからだと思うんだけど。
なのに今怒ってない!?
ましてやすごい近づいてくる!!
怒ってたら昨日みたいに避けるんじゃないの?
昨日なんかあったの?って聞いたけどスルーされたし。
昨日スルーされたのにすごい近づいてくるということはやっぱり…これは現実じゃないよ!
昨日の今日で避けるのやめるわけないよ?
避けられたいわけじゃないけど。
昨日避けるぐらいあたしにイラついてて今こんなに近寄ってくるなんてありえない。
「夢だよ!夢!」
あたしは自分の頬を引っ張る。
痛い…。
これは夢じゃないのかもしれない。
「…弁当食ってくれてありがとな」
あいつがあたしの肩に顔をのしている…。
すごい近距離からプリンの甘い香りがする。
昨日微かに香った松本くんのシトラスの香りとは違う香り。
神崎は今あたしにありがとうって言ってる。
昨日あたしを避けてたのに。
だけどあたしは昨日神崎をちゃんと起こさなかったことも
「お弁当神崎が玄関に置いててふとビニール袋開けたらめちゃくちゃ美味しそうだったからうっかり食べちゃった…」
ことも申し訳なく思ってるよ!?
「…ごめんね?」
普段はあたしがしているらしい瞬きをする神崎にあたしは謝る。